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『どうぶつびょういん』

作・絵 トビイ ルツ 2008年 PHP研究所


"Doubutsu byouin”
Story & Illustration by Rutsu Tobii 2008 PHP Institute, inc.

2009年  新潟県読書感想文コンクール課題図書
2008年  第38回長野県小中学校図書館部会の推薦図書
2008年 名古屋市選定図書

<書評・紹介>
2015年  浜学園 学習教材
2013年   4/13(土)『朝日小学生新聞』

2010年 『キッズレーダー』(日能研)7月号
2009年 『こどもの図書館』3月号
2008年 『日本児童文学』11/12月号
2008年 『灯台』9 月号 


2009年 韓国語版 出版 OpenKid Publishing
 「どうぶつびょういん」얼룩말 의사 선생님
2014年 中国語(簡体語)版 出版 山東文藝出版社
     『動物医院』
2016年 韓国語版 出版 *新翻訳 BOOK SCENT CO.,LTD.



『どうぶつびょういん』とは

「どうぶつびょういん」は、動物がお医者さんで人間の子供たちが患者の病院。院長先生のドクター・しまうまをはじめ、動物の先生たちが、それぞれの動物的な特徴を生かして、人間の子供たちの調子の悪いところや悩みを聞いて治してくれます。

ある時、いじめっこから逃げるために入院したいという男の子が動物病院にやってくるのですが、動物の先生たちはお友達と仲良くするヒントや、自分らしさを大切にして伸び伸びと生きることを教えて、男の子に元気を与えます。
この本は、同じような悩みを抱える子供たちを癒し、子供たちが成長していく上で身近に経験しそうな問題について、学校や家庭で話し合うきっかけにもなるお話です。


子供にも大人にも、大切なこと

「どうぶつびょういん」は動物のための病院ではありません。動物たちがお医者さんで、子供たちのよくないところを治す手伝いをしてくれる、病院なのです。このおはなしには、たくさんの動物が登場します。それぞれいろんな特徴をもった動物たちと、子供たちのやりとりを通じて、読者である子供たちに、これから生きていく上で 大切に考えてもらいたいことをうまく伝えられたらな、と思いながらつくりました。それは、子供だけでなく大人にも子供と一緒に考えてほしい普遍的なことだったりもします。
お天気にはじまり、植物、動物などの「自然の姿」から学ぶことはたくさんあります。可愛らしい外見をした動物も、厳しい野生の世界を生き抜くため、本能と知恵で、共存や競争の手段を選びとりながら生活している、たくましい存在です。そんな動物たちの姿を比喩にして、日頃、生活を送る上のマナーや道徳的なこと、ポジティブな考え方を伝えたかったのです。


好奇心、思いやり、心をこめることの大切さ

例えば、ぶたさんがお医者さんとして登場する箇所では、食べ物の好き嫌いのある女の子に、ぶたさんが いろんなアドバイスをします。けれどもそのアドバイスは 食に限らず、「好奇心をもつ」ということが、好き嫌いの解決に役にたつのでは、とぶたさん伝えているのです。
それから、料理を作ってくれる人に「思いやりの心」をもつこと。料理を作る立場の人にも「心をこめることの大切さ」をもってもらいたい。ぶたさんが、子供にも大人にも、気づいてもらいたいことのひとつです。料理に限らず「心」を考えることは、すべての行動の根本であってほしいからです。


個性を認めることの大切さ

いじめの問題についての、お話もでてきます。この根深い社会問題を、決して簡単に諭したりはできないのですが、動物たちのメッセージを通じて、何かを感じてもらえるでしょうか。最後には、動物たちは「自分らしくいなさい」とアドバイスしているのですが、「個性を認める、みんなそれぞれ違うことがあたりまえ」ということの理解は、生きていく上でとても大事なことに思えます。他人とくらべて、同じだとか違うといったことを問題にすることで、たくさんの不幸が生まれていることは事実です。外見や社会的地位の格差や差別、それによる競争など、残念ながら、「較べること」はあまりいい現象を引き起こしてはいないようです。けれども、他者と較べず、無二の個性である自分に自信をもつことや、他者を認めて尊重することは、いじめだけでなく、ひいては戦争だってなくせるかもしれない、人間として心がけたい大切な本質ではないでしょうか。子供なりの立場で、ぜひ考えてもらいたいと 願っていることです。
 
本を読んだ後は、大人も子供も、家や学校で飼っているペットや動物を世話しながら、そして動物園に行くたびに、自然や動物の姿から何か生きるヒントやエネルギーを感じてもらえるようになるといいな、と思います。